パソコンのそれは厳しい女子先生には、「社長、ブログは書かなあかんよ!書き続けて枚数が増えるほど多くの人が見てくれるんじゃけん。それでなきゃおえりゃせんよ!」(この先生は岡山の人であります。)と教えられて来ましたが、生来の筆不精と文才の無さで、今日までサボり続けてまいりました。まさに「分かっちゃいるけどようやらへん。」の心境であります。
がしかし、冷たいビールを飲みたいという欲望をグッと抑え、今日を境に私は何が何でも書きたいと痛切に思ったからであります。それは、今当館で公開している「セッション」という映画を観たからであります。もう既にご覧になった方も沢山いらっしゃるとおもいますが、決して宣伝で言うのではなく、「是非とも一人でも多くの人に観ていただきたい。」それ程素晴らしい映画なんです。お帰りになるお客様に、「本当に良かった。」とお褒めのお言葉をよく頂戴致します。この間も、お盆でご主人の帰省のお供で高松に帰ってこられたであろう茨城県水戸市の奥様に、「凄く良かった。水戸市にはこういう映画館が無いので楽しみにして来た。」と満足そうに仰って頂きました。
普段厳しい環境下でついつい士気が落ち込みがちな中、こういうお客様の満足して頂いた笑顔を見る事は本当に映画人冥利に尽きますし、また頑張ろうというファイトが湧いてきます。
洗練された脚本に基づくストーリー、進んでいくテンポの良さ、何をおいても圧巻は、ジャズの音楽の良さと迫力です。多くを書くと野暮になりますが、この音楽だけは絶対にスクリーンで体感して下さい。お願いします。スクリーンでなければはっきり言って良さは殆ど伝わりません。
映画の最後に主人公と鬼教師、お互いが目を見つめ合い男同士がニッコリするシーンがあります。これは、お客様夫々が思いを致す処ではありましょうが、私個人の感覚としては、映画の題名が原題のWHIPLASH(鞭打つ)の方が格好良いと思うのに、そうではなくSESSION(和やかな演奏)になった所以ではないでしょうか?
目と目を見つめあうシーンとしては、私の中では今後間違いなくベスト5に入る作品になりました。蛇足ながら思い出に残るシーンは下記の作品です。(古い作品ばかりで恐縮です。)
・「俺たちに明日はない」 フェイダナウェイ×ウォーレンベイテイ
銀行強盗を続けてきたボニーとクライドが、茂みに隠れていた警察官の動きに驚いて飛び立った鳩を見た。その瞬間、目を合わせお互いの別れと死を覚悟した。その後二人は軽機関銃でハチの巣にされるという衝撃的なシーンでありました。
・「ストリートオブファイアー」 ダイアンレイン×マイケルパレ
愛しながらも別れなければならなくなった運命の二人。最後の別れの時に見せた女性 の瞳は、自らの未練を断ち切る強い意志と、どうしようもない切なさにあふれた素晴らしいものでした。その時にかかる音楽も秀逸でした。ダイアンレインは今でも大好きな女優さんです。
・「ひまわり」 ソフィアローレン×マルチェロマストロヤンニ
新婚早々の夫はイタリア軍兵士としてロシア戦線に出征。雪原で凍死寸前のところをロシア娘に助けられる。妻は夫が生きている事を信じ、広大なロシアの大地を必死で探し回りやっと見つける事が出来たが、夫は既にその娘とロシアで結婚し子供まで作っていた。
イタリアに帰った妻は、夫を強く愛していたが故に荒んだ生活をしていたが、やがて彼女も新しい男性との間にできた子供には「アントニオ」という元夫の名前を付けていた。
暫くして自責の念に駆られた夫がイタリアに帰ってきて復縁を願うが、もう既に二人は歳を重ねており夫々の所帯もあるので結局別れることになる。
ロシアへ帰る夫を見送りに来たローマ駅。列車がホームを離れた瞬間、積年の思いが堰を切ったかのように妻の目からは大粒の涙が流れ落ちる。「ヘンリーマンシーニー楽団」の音楽の盛り上がりと合わせて、何度見ても泣いてしまいます。このシーンは、一生忘れる事は出来ません。
・「眼下の敵」 ロバートミッチャム×クルトユルゲンス
第二次大戦の西大西洋。アメリカ軍フリゲート艦艦長とドイツ軍潜水艦Uボート艦長との一歩も譲らぬ壮絶な戦いの後、双方ともに傷つき航行不能になってしまう。やがて浮上してきた潜水艦艦長とフリゲート艦艦長の海の男二人は目を合わせ、お互いの不屈の闘志と、聡明さと、勇気をたたえあい敬礼をするというシーンですが、何とも格好良かったです。
・番外編としては、23年間も生きて私を癒してくれた愛猫のペルシャ猫「ムービー」ちゃん(オス)の愛くるしい円らな瞳であります。