『アクト・オブ・キリング』【6/7~6/27】

2014/06/07

「あなたが行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」

この映画は、1965年9月30日深夜にインドネシアで発生し、この国のその後の運命はもちろんのこと、国際関係にも大きな変化をもたらした、いわゆる「9・30事件」後の大虐殺を描いたドキュメンタリーである。これは大統領親衛隊の一部が、陸軍トップの6人将軍を誘拐・殺害し、革命評議会を設立したが直ちに粉砕されたというクーデター未遂事件であるが、それだけでは終わらず、未曾有の大混乱をインドネシア社会に呼び起こした。9・30事件そのものは未だにその真相が明らかになっておらず、陸軍内部の権力争いという説も強いが、当時クーデター部隊を粉砕し事態の収拾にあたり、その後第二代の大統領になったスハルト少将らは、背後で事件を操っていたのは共産党だとして非難し、それに続く一、二年間にインドネシア各地で、100万とも200万ともいわれる共産党関係者を虐殺したのである。そしてそれに対して、日本や西側諸国は何ら批判の声を上げることなく口をつぐんだのであった。
それまで、容共的なスカルノ大統領のもとでインドネシア共産党は350万人もの党員と、傘下に多くの大衆団体をかかえる有力な政治勢力のひとつであった。しかしかねてからそれを快く思っていなかった陸軍はその力を削ぐ機会を伺っており、この9月30日の事件を口実にそれに乗り出したものである。とはいえ、当時共産党は合法政党であったから、国軍が前面に出るのではなく、イスラーム勢力やならず者など反共の民間勢力を扇動し、密かに彼らに武器を渡して殺害させたのである。ごく普通の民間人が武器を握らされ、国軍からにわか仕立ての訓練を受けて殺害に手を染めた。イデオロギーの違いから近隣の者はおろか肉親にさえ手をくださねばならない場合もあった。スハルトによる新体制が確立した後の1973年に、この一連の虐殺の中で共産主義者の命を奪ったものに対しては法的制裁が課されないことが検事総長によって正式に決定されたが、その記憶は多くの人にとってトラウマとなって残っている。

【ストーリー】
これが“悪の正体”なのか―――。60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者たちは、驚くべきことに、いまも“国民的英雄”として楽しげに暮らしている。映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは人権団体の依頼で虐殺の被害者を取材していたが、当局から被害者への接触を禁止され、対象を加害者に変更。彼らが嬉々として過去の行為を再現して見せたのをきっかけに、「では、あなたたち自身で、カメラの前で演じてみませんか」と持ちかけてみた。まるで映画スター気取りで、身振り手振りで殺人の様子を詳細に演じてみせる男たち。しかし、その再演は、彼らにある変化をもたらしていく…。
アクトポスター
2012年/デンマーク・ノルウェー・イギリス合作/121分

監督:ジョシュア・オッペンハイマー
配給:トランスフォーマー

上映場所 ソレイユ・2(地下)
上映期間 6/7(土)~6/27(金)終了
6/14(土)~6/20(金) ①12:10 ②18:45
6/21(土)~6/27(金) ①17:50

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©Final Cut for Real Aps, Piraya Film AS and Novaya Zemlya LTD, 2012

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