魔都上海で、各国の諜報部員が暗躍する
太平洋戦争開始前の七日間!
ロウ・イエ監督の第11作目に当たる本作『サタデー・フィクション』は、2019年の第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品作である。
上海出身のロウ・イエ監督は国際的にデビューした『ふたりの人魚』で上海の蘇州川の水中ダンサーに恋する男を描き、『パープル・バタフライ』では、チャン・ツィイーと仲村トオルを起用し、1939年日本軍占領下の上海を描いた。
本作『サタデー・フィクション』は、再び上海を舞台にし、映画の冒頭「1937年11月に上海は陥落したが日本軍の侵入を免れた英仏租界は“孤島”と呼ばれていた」という説明が表示され、太平洋戦争開戦7日前の1941年12月1日から映画は始まる。
監督が一度は挑戦したかったという映画の原点でもあるモノクロ映像を用い、映画音楽を一切排したストイックなつくり。「蘭心大劇場」「キャセイ・ホテル」など当時からある選りすぐりの建物をロケ地として、スタイリッシュな本格スパイ映画が完成した。原作は、ロウ・イエ監督とプロデューサーのマー・インリーの友人でもあるホン・インの小説『上海の死』で描かれる女スパイの物語を脚色し、その脚色した物語の中での演劇公演の物語の主役に横光利一の『上海』中国共産党の女性闘士・芳秋蘭の設定を採用している。
魔都と呼ばれていた上海は当時、欧米中日各国の諜報部員が暗躍する都市だった。フランス諜報部員に女スパイとして育てられたユー・ジンの使命は暗号変更のため上海にやってきた日本海軍少佐古谷三郎から太平洋戦争の奇襲作戦の場所を聞き出すことだった。古谷の日本で亡くなった美代子にそっくりなユー・ジンを利用してのマジックミラー計画が始まるのだった。
STORY
「マジックミラー計画を開始せよ」
1941年、日本軍の占領を免れた上海の英仏租界は、当時「孤島」と称されていた。魔都と呼ばれるこの上海では、日中欧の諜報部員が暗躍し、機密情報の行き交う緊迫したスパイ合戦が繰り広げられていた。
日本が真珠湾攻撃をする7日前の12月1日、魔都上海に、人気女優のユー・ジンが現れる。新作の舞台「サタデー・フィクション」で主役を演じるためだ。一方、この大女優ユー・ジンには、幼い頃、フランスの諜報部員ヒューバートに孤児院から救われ、諜報部員として訓練を受けた過去があり、銃器の扱いに長けた「女スパイ」という裏の顔があった。
そして2日後の12月3日、日本から海軍少佐の古谷三郎が海軍特務機関に属する梶原と共に、暗号更新のため上海にやってくる。ヒューバートはユー・ジンに告げる。「古谷の日本で亡くなった妻は君にそっくりだ」と。それは、古谷から太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るためにフランス諜報部員が仕掛けた“マジックミラー計画”の始まりだった……。