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『遠いところ』【9/29~】

2023/07/23

次の世代に残してはいけない問題がここにある――

2020年代に入って国際的な映画賞や映画祭では、第77回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、第93回アカデミー賞では作品賞に輝いた『ノマドランド』、第78回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞に輝いた『あのこと』、第70回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いた『17歳の瞳に映る世界』など“社会的に過酷な立場に置かれた女性の姿”を描いた作品が高い評価を得ている。
沖縄では、一人当たりの県民所得が全国で最下位。子どもの相対的貧困率は28.9%であり、非正規労働者の割合や、ひとり親世帯の比率でも全国1位。さらに、若年層の出産率でも全国1位となっているように、窮状は若年層に及んでいる。『遠いところ』は、そんな沖縄市のコザを舞台に、幼い息子と夫との3人暮らしをする17歳のアオイが、社会の過酷な現実に直面する姿を描き、全編沖縄ロケにこだわって撮影された。
本作の監督は長編デビュー作『アイム・クレイジー』で、第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞に輝いた工藤将亮。森田芳光、滝田洋二郎、行定勲、白石和彌など、日本映画界を代表する映画監督の現場で助監督を務めてきた。
長編映画3作目の『遠いところ』は、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品。約1200席ある上映会場のチケットは事前に完売。上映後は約8分間にわたるスタンディング・オベーションによって、観客から熱狂的に迎えられた。

主人公アオイを演じたのは、これが映画初主演となった花瀬琴音。彼女は撮影前の1ヶ月間、実際に沖縄で生活し、東京生まれ・東京育ちである彼女が、沖縄在住の方々から見ても、違和感なく“沖縄で生まれ育った若者”に見えるアオイ像を体現。アオイの友人役・海音には映画初出演となる石田夢実、アオイの夫マサヤ役には『衝動』の佐久間祥朗など、花瀬と同様に撮影1ヶ月前から現地に入り、沖縄市コザで実際に生活することによって体感したリアルな感覚は、各々が演じる役に反映されている。
『遠いところ』で描かれているのは、沖縄における局地的な社会問題などではない。日本中のどこでも今まさに起こっている事象である。愛する人からの暴力は、地獄のような現状から必死で逃げる道を間違えてしまうのは、すべて自己責任なのだろうか。社会の理不尽と不条理を突きつけられ、悲痛な想いを抱いて絶望しながらも、もがくアオイの姿には、自らの選択肢が正しいかどうかの想像力を持てない少女たちがいることを思い知らされる。主人公・アオイの間違ってしまった、それでも必死に生きた日々の物語を体感して、生まれ落ちた環境が人生を決めるすべてであって良いのだろうかと、今一度問いかける衝撃作がこの夏誕生した。

STORY

沖縄県・コザ。

17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾と3人で暮らし。おばあに健吾を預け、生活のため友達の海音と朝までキャバクラで働くアオイだったが、 建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。

そんな中、キャバクラにガサ入れが入り、アオイは店で働けなくなる。悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかず、さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕されたと連絡が入り、多額の被害者への示談金が必要になる。切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からある仕事の誘いを受ける―

若くして母となった少女が、連鎖する貧困や暴力に抗おうともがく日々の中で たどり着いた未来とは。

 

2022年/日本/128分/PG12
監督:工藤将亮
出演:花瀬琴音/石田夢実/佐久間祥朗/長谷川月起/他
配給:ラビットハウス

10/6(金)~10/12(木)時間未定

上映場所 ソレイユ・2(地下)
上映期間 9/29(金)~10/12(木)
9/29(金)、10/2(月)~10/5(木) ①11:35 ②18:55
9/30(土) ①11:35※監督舞台挨拶あり ②19:30
10/1(日) ①12:00 ②19:20
10/6(金)~10/12(木) ①12:20

 

 

 

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