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『親愛なる同志たちへ』【6/10~】

2022/05/04

激動の時代を生き抜いた
ロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキーが、
祖国への愛と憎悪を鮮やかに描き出した最高傑作!

ロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキー。弟のニキータ・ミハルコフとともに旧ソビエト連邦時代から今に至るまで、半世紀以上も第一線で活躍しているフィルムメーカーだ。キャリア初期の文芸映画『貴族の巣』(70)や『ワーニャ伯父さん』(71)、黒澤明の原案に基づくアメリカ映画『暴走機関車』(85)、スターリン時代の実話を映画化した『映写技師は見ていた』(91)などは日本でも広く知られている。

そんな現在84歳の巨匠が新たに発表した『親愛なる同志たちへ』は、1962年にソ連の地方都市でありウクライナにほど近い町ノボチェルカッスクで実際に起こった虐殺事件と向き合ったヒューマン・ドラマ。ソ連崩壊後の1992年まで30年間、国家に隠蔽されてきた衝撃的な歴史の真実に迫った作品である。第77回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第93回米アカデミー賞国際長編映画賞・ロシア代表に選定されるなど、すでに世界各国で絶賛を博している。

冷戦下のソビエトでいったい何が行われていたのかー?
世界を震撼させた知られざる真実に向き合った時、リューダは何を選択したのか。
彼女が知ってしまった残酷な現実は、生きることの道しるべとなっていくのだったー。

スターリンを敬愛しソ連の繁栄を信じて疑わなかったリューダは、非武装の市民が次々に殺害される惨たらしい現場を目の当たりにして、自らのアイデンティティーを打ち砕かれていく。さらに、事件を主導したKGBのメンバーであるヴィクトルもまた、リューダの娘の捜索に協力していく中で、事件の隠蔽を図る国家の非情な実態を目撃する。国家に忠誠を誓ったはずの二人だったが、母として娘を案ずるが故にいつの間にか党の規律に反する行動をするようになってゆく。果たして二人が崇敬する”祖国”とは何だったのかー?

コンチャロフスキー監督は、母であり、そして共産党員でもあるリューダの繊細に揺れ動く心情を巧みに演出したことで、時代に翻弄される一人の女性をドラマチックに描いた。さらに、サスペンスとアクションを織り交ぜ、リューダがたどる3日間の激動の運命をスリリングに描出した。また、モノクロ映像にすることで、残酷さよりも静謐な恐ろしさが立ちこめ、当時のソ連の冷徹な空気を見事に映し出している。約5000人のデモ隊が占拠した広場に銃声が鳴り響き、阿鼻叫喚のパニックが引き起こされる虐殺事件のシーンでは、その圧倒的なスケールと緊迫感に息をのまずにいられない。

KGBの公式データによると死者26人、負傷者数十人、逮捕者数百人を出し、7人が処刑された(非公式のデータでは死者100人とされる)とされるノボチェルカッスクの虐殺は、決して遠い過去の話とは言いきれない。重いメッセージをはらんだ本作を鑑賞した者は、ロシアによるウクライナ侵攻、香港、ミャンマーにおける民衆弾圧のニュースが脳裏をよぎるだろう。名匠コンチャロフスキーが完成させたこの渾身の新作は、まぎれもなく現代の不穏な世界情勢と地続きにある歴史大作なのだ。

 

2020年/ロシア/121分/G
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー
原題:Dorogie Tovarischi
出演:ユリア・ビソツカヤ/アンドレイ・グセフ/ウラジスラフ・コマロフ/ユリア・ビソツカヤ/他
配給:アルバトロス・フィルム

上映場所 ホールソレイユ(4F)
上映期間 6/10(金)~6/23(木)
6/10(金)~6/16(木) ①9:10  ②16:25
6/17(金)~6/23(木) ①9:10

 

 

 

(C)Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020

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