スタントパフォーマーという存在
CG技術の発達と共に迫力ある映像に満ちた映画が日々作られている。私たち観客は当たり前にその映像を観ているが、そのアクションシーンがCGなのか、それとも実際に誰かが演じているのかといった点に意識が向くことはない。事実、CGでは表現出来ない動きや迫力あるアクションシーンをより緻密に表現するためにハリウッド映画では今でもスタントパフォーマーたちが活躍している。昨今、このスタントパフォーマーの存在はこれまで以上に映画産業の中で重要視されてきている。2005年には、アカデミー賞にスタント部門を新設する嘆願書が提出されスピルバーグ監督をはじめとする多くの映画人が賛同、イギリスを代表する女優ヘレン・ミレンや『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキなどがスタントパフォーマーもアカデミー賞の対象にすべきであると提唱するなど、その地位を向上させる機運は2000年代に入り急速に高まっている。
名アクションシーンの知られざる裏側に迫る
アクション映画においては、その映画を代表する記憶に残るシーンが存在する。走る貨物トラックの下を車が走行するシーン(『ワイルド・スピード』)や、後ろに人を乗せたまま高速道路をバイクで疾走するシーン(『マトリックス リローデッド』)、走る車からヘリに掛かる縄梯子に乗り移る息を呑むシーン(『トゥルーライズ』)など超人的とも言える数々のシーンはCGではなくすべて女性スタントウーマンたちによって成り立っている。彼女たちスタントウーマンの鍛え抜かれた体と弛まぬ努力の結晶によって生み出されたこれらのシーンは、彼女たちの存在なくして生まれる事はなく、映画の成功の鍵を握るといっても過言ではない。