木内みどりさん遺作『夕陽のあと』【12/27~】

2019/11/03

母親であることを手放した女と、母親になると決心した女
夕陽に染まった海原の向こうに、ふたりの願いが交差する

豊かな自然に囲まれた鹿児島県長島町。一年前に島にやってきた茜は、食堂でテキパキと働きながら、地域の子どもたちの成長を見守り続けている。一方、夫とともに島の名産物であるブリの養殖業を営む五月は、赤ん坊の頃から育ててきた7歳の里子・豊和(とわ)との特別養子縁組申請を控え、“本当の母親”になれる期待に胸を膨らませていた。そんな中、行方不明だった豊和の生みの親の所在が判明し、その背後に東京のネットカフェで起きた乳児置き去り事件が浮かび上がる……。
7年前に何があったのか? “生みの親”と“育ての親”がそれぞれ体験する、子どもと離れる辛さと、お母さんと呼ばれる歓び。彼女たちはそれらを分かち合うことはできるのか? そして、島の子としてすくすくと育った豊和の未来は 。家族のあり方が多様化する時代に、改めて親子の絆を問いかける骨太なヒューマンドラマが完成した。

日本映画を支える実力派キャスト・スタッフが結集

茜役を演じるのは、『くちづけ』でブルーリボン賞主演女優を受賞し、映像、舞台、ナレーションやナビゲーターなど多方面にて活躍中の貫地谷しほり。五月役には『アレノ』で高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞、幅広い役柄で映画ファンを魅了する山田真歩。実力派の二人が、対照的な人生を歩んできた女性たちの深く複雑な愛情や葛藤をそれぞれひたむきに体現する。その他、五月の夫・優一役に永井大、その母親・ミエ役に木内みどり、町役場職員・秀幸役として川口覚が出演。物語の鍵を握る豊和役は、ロケ地・長島町でのオーディションで抜擢された演技初挑戦の小学4年生・松原豊和が演じる。 監督は『海辺の生と死』の越川道夫。現実社会でも後を絶たないDVや乳児遺棄、いまだに表立って議論されることが少ない不妊治療や養子縁組制度などの問題に正面から挑みながら、登場人物たちの心の機微をすくいとる演出によって、すべての世代・性別・立場の観客にあたたかな感動をもたらす普遍的な人間ドラマを作り上げた。

地域の活力が次世代を育む
鹿児島長島町の魅力と、これからの時代の子育て

本作の企画を立ち上げたのは、鹿児島県最北端に位置する長島町の有志で結成された「長島大陸映画実行委員会」。長島町は養殖ブリをはじめとする漁業や農業、畜産業が盛んで、食料自給率は100%を超える。地域コミュニティの結びつきも強く、伝統文化や豊かな産業が親世代から子世代へと受け継がれる環境を築いてきた。しかし、全国的にも高い出生率(2016年調べで2.06人)を誇る一方で、日本の他の多くの地方と同様に過疎化の問題を抱えている。多様な命を育み、人々の生活を見守る大きな海のように、あらゆる人が暮らしやすく、次世代を育みやすい故郷でありたい——。島の人々のそんな願いが出発点となり、本作が誕生した。

 

2019年/日本/133分
監督:越川道夫
出演:貫地谷しほり/山田真歩/永井大/川口覚/他
配給:コピアポア・フィルム

 

上映場所 ソレイユ・2(地下)
上映期間 12/27(金)~1/9(木)
12/27(金)~1/2(木) ①11:45 ②18:55
※12/31(火)1/2(木)は②の上映はありません。
1/3(金)~1/9(木) ①10:00

[margin_5t](C)2019 長島大陸映画実行委員会

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