あたたかい涙があふれる
伊集院静の傑作短編がついに映画化。
いつも一緒だった愛犬のルーがいなくなった―。周りの大人たちはもう戻ってこないと言うけれど、8歳のサヤカは信じることができない。ある夏の終わり、サヤカは一匹の犬に導かれ、喫茶店のマスター・フセ老人と出会う。彼もまた、大きな喪失を抱えて独りで生きていた。別れを受け入れられない二人は、互いのさびしさに寄り添ううちに、思いがけない友情で結ばれていく……。
私たちが人生を歩む上で避けては通れない、愛する者との永遠の別れ。それでも人は誰かと悲しみを分かち合うことで、また新しい何かを築くことができる。限りある命を懸命に生きることで、歓びを味わうことができる。作家・伊集院静の短編を原作に、年齢、性別、立場、さらには種を超えた魂のふれあいを描く珠玉の映画が誕生した。
年齢差77歳。今最も注目される子役・新津ちせと、
世界的演劇人・笈田ヨシの最強コンビ。
主人公のサヤカを演じるのは、映画『3月のライオン』のモモ役や、米津玄師がプロデュースした「パプリカ」を歌うユニットFoorinの最年少メンバーとしてブレイク中の新津ちせ。新世代子役の中でも抜きん出た演技力と天真爛漫さにより200名超のオーディションで役を勝ち取り、直後から愛犬ルーとの特別な絆を表現するため、自宅でルーとの共同生活を開始、ルーと共にサヤカの心身の成長を演じきった。
サヤカの友人となるフセ老人役には、約半世紀にわたってヨーロッパの演劇界で俳優・演出家として活躍し、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』など、映画でも強烈な印象を残してきた笈田ヨシ。
本作ではサヤカに感化され、人生最後の出会いを謳歌する老人の姿を凛とした佇まいで表現する。その他、サヤカの両親に坂井真紀と滝藤賢一、伯父夫婦にマキタスポーツと羽田美智子、祖父母に塩見三省と市毛良枝、医療関係者に柄本明と余貴美子が扮し、あたたかくヒロインを見守る。また10年後のサヤカを有村架純がモノローグ(声)で表現している。
監督と脚色を務めたのは、『トニー滝谷』『そこのみにて光輝く』をはじめ数多くの秀作を送り出してきた制作プロダクションウィルコ代表の橋本直樹。『臍帯』に続く長編監督第2作となる本作は、15年前に原作を読んで以来、映画人としてのキャリアを全てつぎ込んだ渾身作である。全編を詩情豊かに彩る音楽を手がけたのは、坂本龍一との即興セッションや野田秀樹の舞台で注目され、長編映画音楽は今回が初めてとなる原摩利彦。そして主題歌「ここ」と挿入歌「また会うときは」をコトリンゴが担当。包み込むような歌声とメロディーで、登場人物たちの未来を明るく照らしている。