『ウインド・リバー』【10/12~】

2018/08/22

『ボーダーライン』のテイラー・シェリダンがメガホンを執った
圧倒的な緊迫感と衝撃がみなぎるクライム・サスペンス

荒涼としたメキシコ国境地帯におけるアメリカの麻薬戦争の知られざる実態に迫った『ボーダーライン』(15)。銀行強盗を繰り返す兄弟とそれを追うテキサス・レンジャーの攻防を通して、アメリカンドリームの衰退をあぶり出した『最後の追跡』(16)。共に批評家筋の絶賛を博し、それぞれ第88回アカデミー賞®で3部門、第89回アカデミー賞®で4部門にノミネートされたこの2本の骨太な快作は、物語の舞台となった場所も監督&キャストもまったく異なるが、同じシナリオライターが手がけたオリジナル脚本に基づいており、一貫した奥深いテーマが息づいている。その脚本家の名前はテイラー・シェリダン。ハリウッドで今最も注目を集めるクリエイターのひとりと言っても過言ではない新進気鋭の才能が自らメガホンを執り、圧倒的な緊迫感がみなぎるクライム・サスペンスを完成させた。それが“Rotten tomatoes”で満足度87%(04/10時点)と世界中の批評家に絶賛され、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて監督賞に輝いた『ウインド・リバー』である。

雪深いネイティブアメリカンの保留地で、
なぜ18歳の少女は殺されたのか?
その残酷な真実は現代の
アメリカの闇に隠されている

わずか全米4館の限定公開でスタートした本作は、作品のクオリティの高さがSNSや口コミで広まり公開4週目には2095館へと拡大。興収チャート3位にまで昇りつめ、6週連続トップテン入りのロングラン・ヒットを記録した。
多くの観客の関心を引きつけた大きな要因は、『ボーダーライン』『最後の追跡』に続き、現代社会の潮流から“忘れ去られた人々”に光をあてたテイラー・シェリダン監督の視点にある。今回の舞台となるウインド・リバーは全米各地に点在するネイティブアメリカンの保留地のひとつで、荒れ果てた大地での生活を強いられた人々は貧困やドラッグなどの慢性的な問題に苦しんでいる。保留地で頻発する女性たちの失踪や性犯罪被害にインスパイアされ、その信じがたい現状を告発した本作は、まさに今のアメリカに渦巻く闇を衝撃的なストーリー展開でえぐり出していくのだ。
さらに、ミステリー仕立てのクライム・サスペンスとしての充実ぶりも目覚ましい。心に傷を抱えた孤高のハンターとFBIから派遣された新人女性捜査官という対照的なコンビが、幾多の苦難に見舞われながらも心を通わせ、理不尽な殺人事件の真相ににじり寄っていく様をスリリングに描出。不意に炸裂するアクション・シーンを織り交ぜながら、主人公たちが必死の思いで貫こうとする“正義”の重みをひしひしと伝えるエモーショナルなドラマは、観る者の心を揺さぶってやまない。

孤高のハンターと新人捜査官の共闘を力強く演じる
ジェレミー・レナー×エリザベス・オルセン

ウインド・リバーの大地に根ざして生きる凄腕のハンターで、殺人事件の捜査に協力する主人公コリーを演じるのはジェレミー・レナー。『ハート・ロッカー』でアカデミー賞®賞主演男優賞にノミネートされ、『メッセージ』での好演も記憶に新しい実力派スターが、ストイックでありながら豊かな人間味を内に秘めたキャラクターをこのうえなく魅力的に体現し、キャリア最高の名演技を披露する。
殺人捜査の経験をほとんど持たず、厳寒の山岳地帯に初めて足を踏み入れるジェーンに扮するのはエリザベス・オルセン。いかにも頼りなげに登場する新人捜査官が、いたいけな少女が犠牲となった悲劇的な事件に心を痛め、過酷な試練を乗り越えて成長していく姿が深い共感を誘う。くしくもレナーとオルセンは“マーベル・シネマティック・ユニバース”のホークアイ、スカーレット・ウィッチ役で共演経験があり、両者の新たな“共闘”が実現したことも大きな話題である。
また、雪に閉ざされた大自然の風景をダイナミックに捉えた映像世界に荘厳な神秘性を吹き込む音楽を創出したのは、『ジェシー・ジェームズの暗殺』『最後の追跡』などのニック・ケイヴとウォーレン・エリス。『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』のベン・リチャードソン(撮影監督)、『アメリカン・スナイパー』でアカデミー賞®にノミネートされたゲイリー・D・ローチ(編集)らの一流スタッフの見事な仕事ぶりも見逃せない。

 

2017年/アメリカ/107分
監督:テイラー・シェリダン
原題 :Wind River
出演:ジェレミー・レナー/エリザベス・オルセン/ジョン・バーンサル/ジル・バーミンガム/ケルシー・アスビル/他
配給:KADOKAWA

 

上映場所 ソレイユ・2(地下)
上映期間 10/12(金)~10/25(木)
10/12(金)~10/17(水) ①14:50 ②19:25
10/18(木) ①18:20
10/19(金)~10/25(木) ①14:40

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