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『クモとサルの家族』【7/7~】

2023/04/30

INTRODUCTION

本作は、長澤佳也監督によるオリジナル脚本の作品である。監督は、かねてから、日本が世界に誇る伝統芸である“時代劇”に魅力を感じていた。数ある時代劇の中でも、忍術というわくわくする魅力のある“忍者”を主人公に、“家族”をテーマとする物語を書きあげ、アクションや忍術の見せ場のある良質なエンターテインメント時代劇となった。

家長である夫サルは専業主夫で家を守り、優秀な忍びの妻クモが稼いで、夫がかぶらされた元師匠の借金まで返済している。4人の子どもたちは、夫婦の実子とクモの連れ子と孤児という複雑な関係である。しかし、この家族は、皆で力を合わせて生活していくということで1つになっている、幸せな家族である。あえて、街中ではなく、郊外に住み、野草を取り狩りをして、自然の恵みをいただくという暮らしで、子どもは食べるだけではなく一緒に食料を調達する、家族皆の役割がある。

時代劇でありながら、現代の日本で実践され始めている主夫、血縁関係でない兄弟姉妹、移住先でのスローライフ、食育といった、普遍的な家族の暮らし方を考えさせてくれる映画である。

このような深いテーマがありながら、心躍る忍術や痛快なアクションシーン、そして、時代を越えた音楽の演出がエンターテインメントとしての面白さを見事に演出している。

キャストには、今、映画にテレビドラマに大活躍であり家長で主夫のサル役の宇野祥平、共に働きバランスの良い夫婦関係を実践している妻で稼ぎ頭のクモ役に徳永えりのW主演、実は藩主である家族に助けられた老人役に奥田瑛二、超絶的技術の狙撃手に緒川たまき、サルの元仕事仲間にどぶろっくの江口直人、侍に憧れる純朴な若者にミュージカル舞台で人気の黒羽麻璃央、母息子を演じている白石加代子と仲村トオルというベテランの名演に、観客は冒頭から映画の世界に引き込まれていく。

また、本作は、映像の質感と撮影現場の緊張感にこだわり、35mmのフィルムで撮影されている。

コロナ禍となり、家にいる時間が増えたことから、家族の在り方やどう暮らすのか?ということが、あちこちで語られるようになった。それまでは、保護者と子ども、祖父母などなどと一緒に暮らし、現役のお父さんが外で働くのが普通の家族という雰囲気があった。しかし、シェアハウスやルームメイト、夫の育休や夫婦の家事分担、または他人同士でも個々人の独立性を守りながら助け合っていく、互助会的な暮らし方を選ぶ人も出てきた今、エンターテインメントとして楽しんだ後、大切なものを持って帰ることのできる映画が誕生した。

STORY

江戸時代初期。椿藩と火ノ藩の中立地帯にある森の中に暮らす家族がいた。家長のサルは元忍び。天下泰平の時代となり仕事もなく主夫として家庭を守っている。もともと血生臭い仕事は嫌いで現役時代はもっぱら争いの交渉人として活動していた。妻クモは他国から声が掛かる売れっ子忍び。仲介人を介して働く妻の稼ぎがこの家族の生命線だ。四人の子どもたちは実子の一番下の弟兎、クモの連れ子の長女蝶、孤児の長男竜と次女豪であった。

国境沿いにある禿山峠に一人の老人が迷い込む。峠には天狗という凄腕の狙撃手が火ノ藩から派遣されていた。天狗の仕事は侵入者を一撃で射止めること。老人を発見したサルの子どもたちは危険をかえりみず救出作戦を実行する。助け出された老人は、記憶が曖昧でなぜ峠に舞い込んだのか覚えてなく、サルの家に留まることに。サルは老人に行方不明になった自分の忍びの師匠を重ね見ていた。哀れみと親しみを感じたサルは老人を家族の待つ家に帰してやりたいと強く思うのだった。

クモの調べで、この老人、姥捨など厳しい政策を敷いてきた椿藩藩主の貴虎とわかる。貴虎は、戦の最中に家臣の謀反に遭い、家族を目の前で殺された衝撃から一時的に記憶をなくしていた。火ノ藩が貴虎にかけた莫大な懸賞金を求めて、賞金稼ぎたちが襲いかかる。退路を断たれたサル一家は椿藩に入る唯一の経路で、天狗の狙撃と傭兵の追撃の板挟みとなる。老人を救うと決めたサル一家の運命は...

 

2022年/日本/82分
監督:長澤佳也
出演:宇野祥平/徳永えり/仲村トオル/奥田瑛二/他
配給:リアルプロダクツ

 

上映場所 ソレイユ・2(地下)
上映期間 7/7(金)~7/13(木)
7/7(金)~7/13(木) ①13:45

 

 

 

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