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『スワンソング』【9/16~】

2022/07/10

誰もが向き合う人生最後の決断を胸に、白鳥は飛び立てるのか?
勇気や愛に後押しされ、人は人生を歩み続ける---。

ヘアメイクドレッサーとして活躍してきたパトリック・ピッツェンバーガー、通称“ミスター・パット”にとっての「スワンソング」は、はたしてわだかまりを残したまま亡くなってしまった親友であり顧客のリタを、天国へと送り届ける仕事になるのか?
ヘアメイクの現役生活を遠の昔に退き、老人ホームでひっそりと暮らすパットは、思わぬ依頼を受ける。かつての顧客で、街で一番の金持ちであるリタが、遺言で「パットに死化粧を」とお願いしていたのだ。リタの葬儀を前に、パットの心は揺れる。すっかり忘れていた生涯の仕事への情熱、友人でもあるリタへの複雑な思い、そして自身の過去と現在……。
ゲイとして生き、恋人との生活も送ったパットだが、最愛のパートナー、デビッドを早くにエイズで失っていた。リタの遺言によって、パットにはさまざまな思い出が去来していく。人生の最後に、人は何を残すことができるのか? そんな疑問に突き動かされるように、老人ホームを抜け出したパットが、多くの人と出会い、過去の自分と向き合うことで決意を固めていく。それは、ささやかな決意かもしれない。しかし、いつか誰もが向き合うことになる、人生最後の決断でもある。
何かと話題になる「終活」というトピックを描くのはもちろんのこと、多くの人が人生で迷いを感じた時に背中を押してくれる、そんな勇気を与える感動作、それが『スワンソング』である。

ゴージャスに生き抜く。
華麗に羽ばたく。

オハイオ州の小さな町、サンダスキーの老人ホーム。
パトリック・ピッツェンバーガーは、静かな余生を送っていた。ホームの職員から何か注意を受けても聞き流し、日課といえば食堂の紙ナプキンを自室に持ち帰り、丁寧に折り直すことくらい。しかしパトリックの心には過去の思い出がつねに去来していた。ヘアメイクドレッサーだった彼のサロンは街でも大人気。「ミスター・パット」と呼ばれ、顧客から愛されていたこと。そして愛する恋人デビッドとの生活と、早くに彼を失ったこと……。
そんなパットを、ある日、弁護士のシャンロックが訪ねて来る。かつてのパットの顧客で、街でも一番の金持ちであったリタ・パーカー・スローンが亡くなったというのだ。リタは「死化粧はパットに頼んでほしい」と遺言書に残していた。シャンロックによると、その報酬は2万5000ドルだという。驚くパットだが、リタへの複雑な思いや、すでに現役を引退した現実から、「ぶざまな髪で彼女を葬って」と言い捨て、申し出を断ってしまう。
しかしパットはリタの遺言に動揺を隠せない。思い出の写真やジュエリーなどを久しぶりに手に取って眺めるうちに、輝いていた時間に思いを馳せる。そして同じホームに暮らす女性の髪を美しくセットし、自分の腕が衰えていないことにも気づく。本能に突き動かされるように、パットは老人ホームを抜け出すのだった。
街の中心部までの長い距離を歩き続けるパット。デビッドの墓も訪ね、行く先々の人たちとの出会いを通し、リタの遺言を叶えてあげたい気持ちが芽生えいく。しかし、以前に暮らしていた街は様変わりしていた。デビッドと暮らした家の場所へ行くと、そこは更地になっており、新たな所有者に尋ねたところ、元の家に残っていたものはパットの帽子だけだと知らされる。エイズで亡くなったデビッドは遺言書を残しておらず、土地の抵当権は親族の甥に引き継がれていたのだ。
リタの孫ダスティンとも会い、改めて協力を求められたパットは、弁護士のシャンロックの元へ向かい、リタのメイクアップを引き受けると伝える。道具を揃えるために前借りを頼むパットに対し、シャンロックはポケットマネーの20ドルを手渡すが、パットは現金をすぐにカフェのワインで使い切り、化粧品は万引きで調達する。しかしどうしても必要なヘアクリームだけは手に入らなかった。時代遅れとなったその商品を扱っていたのは、街でも人気のヘアサロンで、かつてパットの元で働いていたやり手のディー・ディーの店だった。ディー・ディーと言い争った末に、パットはそのヘアクリームを貰い受ける。
リタのメイクアップへの準備は整いつつあったが、老人ホームから出てきたジャージ姿で向かうわけにもいかない。パットは小さなブティックに立ち寄ると、偶然にも店主は、パットのヘアサロンに一度だけ来たことがある女性だった。パットも彼女を覚えており、感激した店主は「いつか似合う人が現れると思って取ったおいた」というグリーンのスーツを彼にプレゼントする。自分にぴったりのスーツに満足し、ドラァグクイーンとしてステージにも立った懐かしのゲイバーも訪れるパット。やがて意を決して葬儀場へ向かうが、最後の最後に、彼の心は揺れ動くのであった――。

 

2021年/アメリカ/105分
監督:トッド・スティーブンス
原題:Swan Song
出演:ウド・キア/ジェニファー・クーリッジ/アイラ・ホーキンス/ステファニー・マクベイ/他
配給:カルチュア ・ パブリッシャーズ

上映場所 ソレイユ・2(地下)
上映期間 9/16(金)~9/29(木)
9/16(金)~9/22(木) ①11:35  ②17:30
9/23(金)~9/29(木) ①9:15

 

 

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