『繕い裁つ人』【5/16~】

2015/03/11

 この店にあるのは、一生ものの、しあわせ
こだわりの仕立て屋の二代目と、彼女の繕う服を愛する人たちが紡ぎだす“服と人”との深く切ない物語

 心にやさしい明かりを灯す感動作『しあわせのパン』と、第38回モントリオール世界映画祭特別招待作品となった『ぶどうのなみだ』で、日本はもちろん世界でも高く評価されている三島有紀子監督。前作、前々作で食と人をテーマにしてきた三島監督が、今度は着ることと生きることの切っても切れない関係を、温かさの中にも厳しさと切なさを込めた眼差しで描く、最新作が完成した。

 「いつか仕立て屋の映画を作りたい」と願ってきた三島監督が、池辺葵の大人気コミック「繕い裁つ人」(講談社「ハツキス」連載)と運命的に出逢った。「主人公の南市江がミシンを踏む横顔が頭から離れなくなり、市江の生き様に強烈に寄り添いたくなった」と語る三島監督の強い想いのもと、「衣」というテーマと仕事に生きる女性のスピリットが融合した、唯一無二の世界観の実写映画化が実現した。

主演は、『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ数々の栄えある賞に輝き、『ゼロの焦点』『阪急電車 片道15分の奇跡』でも高い演技力を絶賛された中谷美紀。「“夢を見るための洋服”を大切に真摯に繕う市江の姿に惹かれました」と語る中谷は、市江の凛としたプロフェッショナルの顔と、ぶっきらぼうで口は悪いがまっすぐな心を丁寧に演じきった。

 市江の仕事に心を奪われる藤井には、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した三浦貴大。また、圧倒的な存在感を放つ個性派女優の片桐はいり、『小さいおうち』でベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた黒木華、TVドラマ「夜行観覧車」で注目された期待の新鋭・杉咲花、さらに中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子らのベテランまで充実した顔ぶれがそろった。

脚本は『永遠の0』の林民夫。衣装は『春の雪』『空気人形』などの映画から舞台「ベッジ・パードン」、そしてTV「あまちゃん」まで鮮烈な印象を残す伊藤佐智子。物語の舞台となる神戸の街を中心に兵庫県でオールロケを敢行、異国情緒漂うエレガントな街並みが、スクリーンを彩る美しい洋服を引き立てる。

市江のように、好きなものとだけ、シンプルに生きる。覚悟もいるけれど、それ以上の喜びが、あるだろうか? どうぞ、あなたも「南洋裁店」にお立ち寄りを。もっと人生が愛おしくなるはず。

ストーリー

神戸の街を見渡す坂を上ると、その店はあった。「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。店主の南市江が作る服は、いつも即日完売。すべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点ものだ。

神戸のデパートに勤める藤井は、市江にブランド化の話を持ち掛けるが、まるで“頑固じじい”のような彼女は、全く興味を示さない。一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ、市江はそれで満足だった。南洋裁店の服は、世界で一着だけの一生もの──それが市江の繕い裁つ服が愛される、潔くも清い秘密だった。

だが、自分がデザインしたドレスを作りたいはずだという藤井の言葉に、市江の心に封印してきた何かが揺れ動く──。

nuitatuhito2015年/日本 /104分

監督:三島有紀子
出演:中谷美紀/三浦貴大/片桐はいり/黒木華/杉咲花 他
配給:ギャガ

上映場所  ホールソレイユ(4F)
上映期間  5/16(土)~6/12(金)
 5/23(土)~5/29(金)  ①11:40 ②16:10 
 5/30(土)~6/5(金)  ①11:25
 6/6(土)~6/12(金)  ①13:50

[margin_5t](C)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

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