ショーン・ベイカーと共に20年もの歳月を経て創り上げたのは、
ツォン・シーチンの故郷・台湾を舞台に紡ぐ、多世代家族の物語。
オスカーに輝いた『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカーが編集・製作に名を連ね、監督のツォン・シーチンと共に脚本を手がけた『左利きの少女』。04年にベイカーと『テイクアウト』で共同監督を務め、以降はプロデューサーとして彼を支えてきたツォン・シーチンが、満を持して単独監督デビューを飾った本作は、25年アカデミー賞®国際長編映画賞・台湾代表に選出され、同賞の最終候補15作品にリストイン。東京フィルメックスでは観客賞、ローマ国際映画祭では最高賞を受賞するなど、広く支持を集めた。
iPhoneが捉えた遊園地のような台北の夜市、そこに息づく日常。
“左づかい”を祖父に叱られた少女の瞳にはどんな世界が映るだろう。
賑やかな喧騒と色彩豊かな都会の片隅で、厳しい現実と向き合う母娘の姿を幼いイージンの目線を中心に捉えてエネルギッシュ且つ繊細に活写した本作は、人間の清濁を飲み込んだ家族ドラマとして共感を呼び、思いもよらないサプライズと感動をもたらす。ベイカーに強く勧めたことで『タンジェリン』が生まれたように、ツォン監督はiPhoneを駆使して街の奥へと自在に入り込み、そこに息づく人々の日常を立ち上がらせる。古いしきたり、世間間のギャップ、“左利き”をモチーフとした制約……。パーソナルな物語に文化的・社会的背景を織り交ぜながら、自分らしさを肯定する、温もりの感じられる作品に昇華させた。

