語られなかった戦争の傷
生きづらさの、こたえを求めて 子どもたちは親をたどる
大阪市で喫茶店を営む藤岡美千代。幼い頃、父から激しい虐待を受けて育った。9歳の時にその父が自死したと聞き、思わず万歳してしまうほどだった。だが成長後、彼女自身もまた、娘を虐待してしまうという苦悩を抱えることになる。
神奈川県でタクシー運転手をする市原和彦。幼少期、父が母に浴びせた「この淫売女が」という罵声は、今も消えない傷として胸に刻まれている。40代で結婚するが、妻に暴力を振るっていたことを死別した今も悔い続けている。
シングルマザーの佐藤ゆな(仮名)もまた、幼少期の虐待により複雑性PTSDを抱え、娘との向き合い方に迷い続けている。新興宗教に傾倒した母からの過剰な支配は、今も彼女の心を締め付けている。
三人が抱える「生きづらさ」は、どこから来たのか。取材を進めるなかで浮かび上がったのは、彼らの父や祖父が、いずれも戦争に従軍していたという共通点だった---。
近年、帰還兵の多くが深刻なPTSDを抱えていた事実が、ようやく明らかになりつつある。癒やされなかった心の傷は、DVや依存症という形で子や孫へと受け継がれることがあり、肉親間の断絶を引き起こすこともある。その連鎖を、いかにして断ち切ることができるのか。

