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『母の聖戦』【3/31~】

2023/02/05

メキシコの実話をベースに、
巨大化された「誘拐ビジネス」の闇に迫った衝撃作

身代金目的の誘拐という犯罪は、極めて成功率が低いうえに刑罰が重いことから、俗に“割に合わない犯罪”と言われるが、中米のメキシコではそのような常識は一切通用しない。犯罪組織による誘拐ビジネスが横行するこの国では、2020年に826件の誘拐事件が報告されている。ただし、治安当局への届出を前提とするこの件数はうのみに出来ない。同国の国立統計地理情報院によると、届出率はわずか1.4%。実際には年間約6万件にもおよぶ誘拐事件が頻発していると推定され、多くの庶民が組織の報復を恐れて泣き寝入りを強いられている。日本では知られざるメキシコの誘拐ビジネスの闇に迫った『母の聖戦』は、ルーマニア生まれでベルギーを拠点に活動するテオドラ・アナ・ミハイ監督の劇映画デビュー作。犯罪組織に誘拐された娘を奪還するため、命がけの闘争に身を投じた女性の実話をベースに、ごく平凡なシングルマザーの主人公がたどる想像を絶する運命を映し出す。
この3ヵ国合作の野心的な国際プロジェクトは、名だたる映画人のサポートによって実現した。現代のヨーロッパを代表する名匠のダルデンヌ兄弟、『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ映画祭パルムドールに輝いたルーマニア・ニューウェーヴの重要監督クリスティアン・ムンジウ、『或る終焉』『ニュー・オーダー』で知られるメキシコの俊英ミシェル・フランコがプロデューサーとして参加。ワールドプレミアとなった第74回カンヌ国際映画祭で大反響を呼んだ本作は「ある視点」部門で勇気賞を受賞し、第34回東京国際映画祭では審査委員特別賞を受賞した。

センセーショナルな社会派劇×緊迫感みなぎるクライム・スリラー

このセンセーショナルにして骨太な社会派ドラマは、並外れた緊迫感がみなぎるクライム・スリラーでもある。全編にわたって主人公シエロの視点でストーリーが展開する本作は、観る者を誘拐ビジネスの闇の奥深くへと誘い、この世のものとは思えない理不尽な暴力が渦巻く光景を目撃させていく。ドキュメンタリー出身であるミハイ監督の、リアリスティックな眼差しに貫かれた映像世界の強度に息をのまずにいられない。ハンディカメラのショットを織り交ぜ、濃密なサスペンスの創出に貢献した撮影監督は、ラドゥ・ジューデ監督の問題作『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』などに携わってきたルーマニア人のマリウス・パンドゥルである。
主演を務めたアルセリア・ラミレスは、キャリアの初期に出演した『赤い薔薇ソースの伝説』から、Netflixドラマ・シリーズの近作「ザ・クラブ」まで長きにわたってメキシコで活躍している実力派女優。とめどもない不安と喪失感に打ちひしがれた母親が、あらゆる苦難もいとわない不屈の捜索者、さらには怒りの復讐者へと変貌していく様を迫真の演技で体現した。

STORY

メキシコ北部の町で暮らすシングルマザー、シエロのひとり娘である十代の少女ラウラが犯罪組織に誘拐された。冷酷な脅迫者の要求に従い、20万ペソの身代金を支払っても、ラウラは帰ってこない。警察に相談しても相手にしてもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出す。そのさなか、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結び、組織に関する情報を提供したシエロは、誘拐ビジネスの闇の血生臭い実態を目の当たりにしていく。人生観が一変するほどのおぞましい経験に打ち震えながらも、行方知れずの最愛の娘を捜し続けるシエロは、いかなる真実をたぐり寄せるのか……。

 

2021年/ベルギー・ルーマニア・メキシコ合作/135分/G
監督:テオドラ・アナ・ミハイ
原題:La Civil
出演:アルセリア・ラミレス/アルバロ・ゲレロ/ホルヘ・A・ヒメネス/アジェレン・ムソ/他
配給:ハーク

上映場所 ホールソレイユ(4F)
上映期間 3/31(金)~4/13(木)
3/31(金)~4/6(木) ①09:30 ②19:40
4/7(金)~4/13(木) ①11:50

 

 

 

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