美しい随筆文に秘められた、
出逢いと再生の物語
新作アニメーション映画「歎異抄をひらく」は、29週連続上映を記録したアニメ映画「なぜ生きる」シリーズの第2弾として、現在制作が進められています。鎌倉時代後期に書かれ、歴史にその名を刻む『歎異抄』は、古今東西、多くの知識人たちを魅了し続けてきました。『歎異抄』の何が、これほどまでに人々を惹きつけてやまないのか。映画「歎異抄をひらく」では、日本人の思想にも大きく影響を与えたとされるこの書物の真意が、物語の中であざやかにひもとかれていきます。
歎異抄とは
「どう生きるか」「なぜ生きるか」という身近なテーマに答えた古典が『歎異抄』です。しかも、意表を突く言葉が多いのが特徴です。その中で、最も有名なのが、「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」でしょう。なぜ、善人よりも、悪人が救われるのか。逆ではないでしょうか。この謎を解くには、「自分とは、いったい何者なのか」「何が善で、何が悪なのか」と、見つめていく必要があります。この謎を解いて、生きるヒントをつかんだ人達は『歎異抄』を絶賛しています。その声は、国内だけでなく、明治以降、フランス、ドイツ、ロシアなどに広がり、世界各国から注目されている古典が『歎異抄』なのです。
師弟愛にあふれた書
生き方に悩んでいた青年・唯円(ゆいねん)が、親鸞(しんらん)に出会い、初めて仏教を聞きます。葬式が仏教の目的ではなく、生きている人間が幸せになるための教えが仏教だと知って感動し、唯円は弟子になります。ある時は厳しく、ある時は愛情深く導かれる師匠(親鸞)の言葉を、後の世の人に正しく伝えたいと決意して、唯円が書き残したのが『歎異抄』です。唯円が名文家であったことと、会話の記録というリアル感が、躍動する文章となり、700年後の私達の心を強く引きつけるのです。