台湾を離れなければならなかった「湾生」たち
彼らを暖かく迎え入れた台湾のこころ
戦後70年、日台の絆の原点がよみがえる
「湾生」とは ―――――――――――――――戦前の台湾で生まれ育った約20万人の日本人を指す言葉です。下関条約の締結された1895年から1945年までの50年間、台湾は日本に統治されていました。当時、日本から公務員や企業の駐在員が台湾へと海を渡り、農業従事者も移民としてその地を踏みました。そして、彼らのほとんどが敗戦後、中華民国政府の方針によって日本本土に強制送還されました。
「引揚者が持ち出しを許されたのは、一人あたり現金1,000円(当時)とわずかな食糧、リュックサック2つ分の必需品だけでした。
【ストーリー】
物語は、清水家の法要のシーンから始まります。清水家は、苦労して荒廃した土地を豊かな農場へと変えました。それなのに、何も持てないまま日本に帰国することに。何故、自分の故郷を追われなければならないのか……。帰国したとき3歳だった清水一也さん(72歳)に、台湾での記憶はほとんどありません。しかし、「湾生」の存在が歴史の闇に埋もれ、忘れ去られようとしているなか、台湾への深い思いを語り続けます。
独り暮らしをする冨永勝さん(88歳)は、かつての友人を捜しに何度も台湾を訪ねています。捜し当てた場所にいたのは、亡き友にそっくりなその息子。わずか数か月前に他界したという友の妻の言葉。こみ上げる失望、喪失感、涙と悔恨。歳月の壁と闘いながら、友人たちを、ともに遊び戯れた場所を、心に留めおくために幾度となく台湾に向かいます。
松本洽盛さん(78歳)は、花蓮県の瑞穂郷で生まれました。帰国当時は9歳。父は警察官でした。「自分の家はどこだ?」という疑問に答えを見つけるため、台湾への旅を重ねています。そして、自らの土に還る場所は、故郷の台湾だと決めています。
家倉多恵子さん(85歳)は、台北で育ち、女学校のときに父親の仕事の関係で台北から花蓮へ転校しました。日本人でありながら、この日本で異邦人として暮らすことに苦しみ続けています。自分の本当の居場所はどこなのか……。自問自答を続ける日々。ある日、台湾で自分の戸籍を発見します。
中村信子さん(85歳)は、台湾で何不自由のない生活を送り、台湾に残ることを強く望んでいました。日本に戻った後、台湾は日本の植民地であったこと、そして、そこでは差別や不平等が横行していたことを知ります。
台湾に残った湾生である片山清子さんは、幼少時に台湾人に預けられました。そして、80年間ずっと実の母親の居場所を探していました。何度も挫けそうになりましたが、娘や孫の助けを借り、やっと一筋の希望が見えてきました。待ち続けた80年間、想いがかなう時が訪れます。
本作は、登場する「湾生」たちそれぞれの物語であるだけでなく、約20万人の「湾生」の人々の物語でもあります。彼らの身を焦がすような台湾への愛から生まれた作品であり、時間と空間を超えた人間同士の友情と家族の絆の物語です。
残された時間のなかで「湾生」たちが語る言葉の端々から、台湾に対する信頼と絆、愛、希望、そして平和への願いが、私たちの心の中に静かに響いてきます。
2015年/ 台湾 /111分/
原題:湾生回家 Wansei Back Home
監督:ホアン・ミンチェン
出演:冨永勝/冨永勝/清水一也/松本洽盛/竹中信子 他
配給:太秦
上映場所 | ソレイユ2(地下) |
上映期間 | 2/18(土)~3/3(金) |
2/18(土)~2/24(金)) | ①11:00 |
2/25(土)~3/3(金) | ①13:25 |
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