『祖谷物語-おくのひと-』【7/26~8/15】

2014/07/26

山と生きる。

その美しくも厳しい大地に根をおろし、時代に翻弄されながらも逞しく生きる人々がいる。本作『祖谷物語―おくのひと―』は、そんな人々の営みを真摯に見つめ、現代社会が見失って久しい“本当の豊かさ”を見出そうとする意欲作である。 東京を除く全てのシーンをオール徳島で撮影し、若草萌える春から雪に閉ざされた冬まで、四季折々の表情を見せる祖谷を克明に記録。また、揺れ動く人々の心情を温かに綴った物語は、スタジオジブリ作品「となりのトトロ」や「おもひでぽろぽろ」のように、誰の中にも眠る “心の故郷”を呼び覚まし、時空を遡ったかのような体験をさせてくれる。

主人公の女子高生・春菜を演じたのは「ハイキック・ガール!」「KG カラテガール」「女忍 KUNOICHI」など本格アクション映画の主演を務め、最近では井口昇監督の話題作「デッド寿司」でコメディにも活躍の場を広げた武田梨奈。本作ではアクションを完全封印し、忍び寄る時代の変化や将来の不安に揺れ動く心の機微を巧みに表現。演技派女優としての新境地を披露する。
春菜と暮らすお爺役には、ダンサー・俳優として国内外を問わず活動し、映画「たそがれ清兵衛」では日本アカデミー賞に輝いた田中泯。東京からやってきた青年・工藤役には、「赤目四十八瀧心中未遂」「キャタピラー」「さよなら渓谷」など、全身全霊の演技で映画界を揺るがしてきた大西信満と、これ以上ない豪華キャストが出揃った。

監督は、舞台となった徳島県出身の蔦哲一朗。東京工芸大学時代にアナクロ映画集団「ニコニコフィルム」を立ち上げ、前作『夢の島』を発表。デジタル化に堂々と反旗を翻し、本当の「映画らしさ」を追求したモノクロ16mmフィルムによる撮影で、バンクーバー国際映画祭、イギリス・グラスゴー映画祭などに出品。海外からも高評価を獲得した期待の若手監督である。待望の新作となる本作においても、完全35mmフィルムでの撮影を敢行。デジタル化が浸透していく映画業界の逆風に屈することなく、100年後、1000年後まで残る本物を制作しようと志高く撮影に挑み、世界の映画に引けを取らない映像美を実現した。

【ストーリー】
ある夏の日、川を遡るようにボンネットバスに乗って東京から青年・工藤がやってくる。自然豊かなこの田舎村で、工藤は自給自足生活を始めようとしていた。ところが、一見平和な村では、地元の土建業者と自然保護団体との対立や、鹿や猪といった害獣から畑を守ろうとする人々と獣の戦いなど、様々な問題が起こっていた……。

そんな中、工藤は人里離れた山奥でひっそりと暮らすお爺と春菜に出会う。電気もガスもなく、物もほとんどない質素なこの家の生活は、時間が止まったかのようにゆっくりしている。お爺は毎朝、山の神様が祀ってある社まで山を登ってゆき、 お神酒を奉納する。春菜は一時間かけて山を下って学校に通い、放課後はお爺の畑仕事を手伝う。効率とは無縁の2人の生活は、工藤の心をゆっくりと浄化していく。

しかし、季節が巡るにつれ、おとぎ話のようなお爺と春菜の生活にも変化が起きる。進学に悩む春菜と体調が悪化していくお爺。ずっと続くと思っていたお爺との生活がズレ始めたことに不安を抱く春菜だが、お爺は春菜の心配を余所にいつものように山に出掛けていく。田舎での生活に期待を寄せていた工藤も、 厳しい自然との共存に限界を感じ、自分は所詮文明社会の下でしか生きられないということに絶望を隠せないでいた…。

祖谷ポスター
2013年/日本/169分/DCP

監督:蔦哲一朗
出演:武田梨奈/田中泯/大西信満/他
配給:ニコニコフィルム

上映場所 ホール・ソレイユ(4F)
上映期間 7/26(土)~8/15(金)終了
8/2(土)~8/8(金) ①9:30
8/9(土)~8/15(金) ①10:15

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