『ヒトラーへの285枚の葉書』【9/23~】

ペンと葉書だけを武器にしてヒトラー政権に抵抗した
ごく平凡な労働者階級の夫婦の驚くべき物語

戦後70年以上経った今も、第二次世界大戦下におけるナチス・ドイツの恐怖政治を題材にした映画は絶え間なく作られている。製作国もジャンルも切り口も多様なそれらの作品は、それぞれが現代に通じる独自のテーマやメッセージを打ち出し、日本でも幅広い層の映画ファンの興味を引きつけてきた。このたび新たにお目見えするイギリス、フランス、ドイツの3ヵ国合作映画『ヒトラーへの285枚の葉書』は、ナチの非人道的な全体主義に立ち向かった男女を描くヒューマン・ドラマだが、これまでのレジスタンスものとはまったく趣を異にする。主人公は戦時下のベルリンで慎ましい生活を営み、どの組織にも所属していない労働者階級の夫婦。特別な知識や力を何ひとつ持たない一般市民が、ペンと葉書だけを武器にして命がけの抵抗運動に身を投じていく驚くべき物語である。

本作の原作は、ドイツ人作家ハンス・ファラダがゲシュタポの記録文書を基に、わずか4週間で書き上げたと言われる「ベルリンに一人死す」。実在したオットー&エリーゼのハンペル夫妻をモデルにしたこの小説は、アウシュヴィッツ強制収容所からの生還者であるイタリアの著名作家プリーモ・レーヴィに「ドイツ国民による反ナチ抵抗運動を描いた最高傑作」と評され、1947年の初版発行から60年以上経た2009年に初めて英訳されたことで世界的なベストセラーとなった。

 この反戦小説に深い感銘を受け、自らメガホンを執って念願の映画化を実現させたのは、1990年代に『シラノ・ド・ベルジュラック』『インドシナ』『王妃マルゴ』といったフランス映画の歴史大作に相次いで出演し、美男スターとして一世を風靡したヴァンサン・ペレーズ。ペレーズ監督自身、父親がスペインの出身で祖父はフランコ将軍のファシスト政権と戦い処刑され、母親はドイツ系でナチスから逃れて国外へ脱出したという過去を持っている。本作では、息子の死をきっかけにナチの独裁政権に反旗を翻した平凡な夫婦が、ゲシュタポの捜査網をかいくぐりながら2年間にわたって孤独で絶望的な闘いを繰り広げていく姿を、静かな畏敬の念をこめて映し出す。

 

【ストーリー】

1940年6月、戦勝ムードに沸くベルリンで質素に暮らす労働者階級の夫婦オットー(ブレンダン・グリーソン)とアンナ(エマ・トンプソン)のもとに一通の封書が届く。それは最愛のひとり息子ハンスが戦死したという残酷な知らせだった。心のよりどころを失った二人は悲しみのどん底に沈むが、ある日、ペンを握り締めたオットーは「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」と怒りのメッセージをポストカードに記し、それをそっと街中に置いた。ささやかな活動を繰り返すことで魂が解放されるのを感じる二人。だが、それを嗅ぎ付けたゲシュタポの猛捜査が夫婦に迫りつつあった―。

2016年/ ドイツ・フランス・イギリス合作 /103分/
原題:Jeder stirbt fur sich allein
監督:バンサン・ペレーズ
出演:エマ・トンプソン/ブレンダン・グリーソン/ダニエル・ブリュール/ミカエル・パーシュブラント/モニーク・ショーメット 他
配給:アルバトロス・フィルム

上映場所 ソレイユ2(地下)
上映期間 9/23(土)~10/6(金)
9/23(土)~9/29(金) 時間未定
9/24(土)~10/6(金) 時間未定

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